京都府立大学 分子栄養学研究室の研究成果が国際学術誌 「iScience」(Cell Press)に掲載されました :サルコペニア(加齢性筋萎縮?機能低下)を引き起こす新しい仕組みの解明
京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 分子栄養学研究室の大学优德w88官网_w88优德官网手机版-登录下载 大藪葵日本学術振興会特別研究員と亀井康富教授を中心とする共同研究グループ※1 は、遺伝子の DNA メチル化修飾の増加が骨格筋老化を起こす引き金となることを明らかにし、この内容が CellPress が発行する国際学術誌「iScience」に 2025 年 3 月 3 日付けにてオンライン掲載されました。
加齢に伴う骨格筋の量および機能の低下は「サルコペニア」と呼ばれ、寝たきりや要介護、医療費の増大などにつながることから、社会的?医学的問題となっています。しかし、サルコペニアの原因となる骨格筋老化がどのようにして引き起こされるのか、これまで十分な知見が得られていませんでした。
今回、私たちが行ったマウスを用いた研究から、エピゲノム※2 情報の一つである遺伝子の DNA メチル化修飾※3 の増加が、老化した骨格筋の特徴であることがわかりました。近年、DNA メチル化などを指標とした生物学的年齢※4 の増加が、老化プロセスと相関することが報告され、エピゲノムと老化の関係性が注目されています。しかし、骨格筋での DNAメチル化の蓄積と骨格筋老化との因果関係は明らかではありませんでした。
そこで本研究では、骨格筋特異的に DNA メチル化を蓄積させたエピゲノム改変マウスを新たに作製し、DNA メチル化の増加によるエピゲノム情報の破綻が、骨格筋の恒常性や老化に及ぼす影響を調べました。その結果、DNA メチル化の増加は、骨格筋において種々の老化様変化を引き起こすことを見出しました。年齢を重ねると骨格筋の量や機能が低下することがありますが、マウスを使った実験で、骨格筋の衰えが DNA メチル化の蓄積によって加速することがわかりました。さらに興味深いことに、骨格筋での慢性炎症※5 が、老化とDNA メチル化の蓄積によって相乗的に増強されることを突き止めました。
本研究成果は、骨格筋老化制御における DNA メチル化の重要性を明らかにし、骨格筋のエピゲノム情報の破綻(特に、DNA メチル化の蓄積)がサルコペニアの発症と密接に関わっていることを示唆するものです(概要図)。
加齢に伴う骨格筋の量および機能の低下は「サルコペニア」と呼ばれ、寝たきりや要介護、医療費の増大などにつながることから、社会的?医学的問題となっています。しかし、サルコペニアの原因となる骨格筋老化がどのようにして引き起こされるのか、これまで十分な知見が得られていませんでした。
今回、私たちが行ったマウスを用いた研究から、エピゲノム※2 情報の一つである遺伝子の DNA メチル化修飾※3 の増加が、老化した骨格筋の特徴であることがわかりました。近年、DNA メチル化などを指標とした生物学的年齢※4 の増加が、老化プロセスと相関することが報告され、エピゲノムと老化の関係性が注目されています。しかし、骨格筋での DNAメチル化の蓄積と骨格筋老化との因果関係は明らかではありませんでした。
そこで本研究では、骨格筋特異的に DNA メチル化を蓄積させたエピゲノム改変マウスを新たに作製し、DNA メチル化の増加によるエピゲノム情報の破綻が、骨格筋の恒常性や老化に及ぼす影響を調べました。その結果、DNA メチル化の増加は、骨格筋において種々の老化様変化を引き起こすことを見出しました。年齢を重ねると骨格筋の量や機能が低下することがありますが、マウスを使った実験で、骨格筋の衰えが DNA メチル化の蓄積によって加速することがわかりました。さらに興味深いことに、骨格筋での慢性炎症※5 が、老化とDNA メチル化の蓄積によって相乗的に増強されることを突き止めました。
本研究成果は、骨格筋老化制御における DNA メチル化の重要性を明らかにし、骨格筋のエピゲノム情報の破綻(特に、DNA メチル化の蓄積)がサルコペニアの発症と密接に関わっていることを示唆するものです(概要図)。
概要図.DNAメチル化の蓄積が骨格筋の老化様変化を引き起こした
DNAメチル化の増加(Dnmt3a過剰発現)によるエピゲノム情報の破綻は、1) 細胞老化関連分泌形質※6(SASP:Senescence-Associated Secretory Phenotype)因子を含む細胞老化?炎症関連遺伝子群の発現増強、2)速筋特異的な筋萎縮(サルコペニアの特徴)、3) 遅筋線維(Type I線維)の割合の増加、4) ミトコンドリアタンパク質発現の低下、5) オートファジー不全、6) 持久運動能力の低下、7) 代謝弾性※7(特に、筋萎縮からの回復能)の低下など、骨格筋において種々の老化様変化を引き起こした。Dnmt3a※8:DNA methyltransferase 3 alpha(DNAメチル化酵素3a)、Tg:Transgenic。
※1共同研究グループ
1. 京都府立大学 大学优德w88官网_w88优德官网手机版-登录下载命環境科学研究科 分子栄養学研究室
2. プロダクティブ?エイジング機構
3. 大阪大学 大学院薬学研究科
4. 熊本大学 発生医学研究所
5. 九州大学 大学院医学研究院
6. 熊本大学 発生医学研究所
7. 群馬大学 生体調節研究所
8. 群馬大学 未来先端研究機構
9. 京都府立医科大学 大学院医学研究科 細胞生物学
10. 九州大学 大学院医学研究院 病態制御内科学
11. 龍谷大学 食品栄養学科
12. 東京都健康長寿医療センター
(用語解説)
※2エピゲノム
DNAの塩基配列を変化させることなく、遺伝子の発現を調節する仕組みです(例:DNAメチル化やヒストン修飾など)。
※3 DNAメチル化修飾
DNAメチル化は、DNAのシトシン塩基にメチル基が付加されるエピジェネティックな修飾で、遺伝子発現を調節する役割を果たします
※4生物学的年齢
生物学的年齢は、実際の年齢(暦年齢)よりも個体の健康状態や老化の進行度を示す指標です。生物学的年齢を正確に評価可能な「老化時計(Aging clock)」としてDNAメチル化修飾が注目されています。
※5慢性炎症
加齢に伴い、さまざまな臓器や組織で炎症が慢性化しやすくなる現象は「炎症老化(Inflammaging)」と呼ばれ、これが多くの加齢関連疾患と密接に関係していることが注目されています。
※6細胞老化関連分泌形質
細胞老化関連分泌形質(SASP:Senescence-Associated Secretory Phenotype)は、老化細胞が分泌するサイトカイン、成長因子、プロテアーゼなどの分子群によって細胞外の環境に影響を与える形質を指します。これにより、組織の炎症や再生、加齢関連疾患の進行などが促進されることが知られています。
※7代謝弾性
代謝弾性(metabolic elasticity)は、外部環境の変化に応じて臓器や組織が適応する能力を指します。例えば脂肪組織では、加齢に伴い、組織の代謝弾性が低下し、絶食や再摂食への反応が鈍くなることが老化の特徴とされています。
※8 Dnmt3a
Dnmt3a(DNAメチル化酵素3α)は、DNAにメチル基を付加する酵素で、遺伝子発現の調節に重要な役割を果たします。
1. 京都府立大学 大学优德w88官网_w88优德官网手机版-登录下载命環境科学研究科 分子栄養学研究室
2. プロダクティブ?エイジング機構
3. 大阪大学 大学院薬学研究科
4. 熊本大学 発生医学研究所
5. 九州大学 大学院医学研究院
6. 熊本大学 発生医学研究所
7. 群馬大学 生体調節研究所
8. 群馬大学 未来先端研究機構
9. 京都府立医科大学 大学院医学研究科 細胞生物学
10. 九州大学 大学院医学研究院 病態制御内科学
11. 龍谷大学 食品栄養学科
12. 東京都健康長寿医療センター
(用語解説)
※2エピゲノム
DNAの塩基配列を変化させることなく、遺伝子の発現を調節する仕組みです(例:DNAメチル化やヒストン修飾など)。
※3 DNAメチル化修飾
DNAメチル化は、DNAのシトシン塩基にメチル基が付加されるエピジェネティックな修飾で、遺伝子発現を調節する役割を果たします
※4生物学的年齢
生物学的年齢は、実際の年齢(暦年齢)よりも個体の健康状態や老化の進行度を示す指標です。生物学的年齢を正確に評価可能な「老化時計(Aging clock)」としてDNAメチル化修飾が注目されています。
※5慢性炎症
加齢に伴い、さまざまな臓器や組織で炎症が慢性化しやすくなる現象は「炎症老化(Inflammaging)」と呼ばれ、これが多くの加齢関連疾患と密接に関係していることが注目されています。
※6細胞老化関連分泌形質
細胞老化関連分泌形質(SASP:Senescence-Associated Secretory Phenotype)は、老化細胞が分泌するサイトカイン、成長因子、プロテアーゼなどの分子群によって細胞外の環境に影響を与える形質を指します。これにより、組織の炎症や再生、加齢関連疾患の進行などが促進されることが知られています。
※7代謝弾性
代謝弾性(metabolic elasticity)は、外部環境の変化に応じて臓器や組織が適応する能力を指します。例えば脂肪組織では、加齢に伴い、組織の代謝弾性が低下し、絶食や再摂食への反応が鈍くなることが老化の特徴とされています。
※8 Dnmt3a
Dnmt3a(DNAメチル化酵素3α)は、DNAにメチル基を付加する酵素で、遺伝子発現の調節に重要な役割を果たします。
【掲載論文】
【雑誌名】
iScience
【論文タイトル】
Dnmt3a overexpression disrupts skeletal muscle homeostasis, promotes an aging-like phenotype, and reduces metabolic elasticity.
【著者】
Oyabu M., Ohira Y., Fujita M., Yoshioka K., Kawaguchi R., Kubo A., Hatazawa Y., Yukitoshi H., Ortuste Quiroga, H.P., Horii N., Miura F., Araki H., Okano M., Hatada I., Gotoh H., Yoshizawa T., Fukada S., Ogawa Y., Ito T., Ishihara K., Ono Y., and Kamei Y.
iScience
【論文タイトル】
Dnmt3a overexpression disrupts skeletal muscle homeostasis, promotes an aging-like phenotype, and reduces metabolic elasticity.
【著者】
Oyabu M., Ohira Y., Fujita M., Yoshioka K., Kawaguchi R., Kubo A., Hatazawa Y., Yukitoshi H., Ortuste Quiroga, H.P., Horii N., Miura F., Araki H., Okano M., Hatada I., Gotoh H., Yoshizawa T., Fukada S., Ogawa Y., Ito T., Ishihara K., Ono Y., and Kamei Y.
【連絡?お問い合せ先】
京都府立大学大学院 生命環境科学研究科
分子栄養学研究室 教授 亀井 康富
電話 075-703-5661 E-mail kamei@kpu.ac.jp
分子栄養学研究室 教授 亀井 康富
電話 075-703-5661 E-mail kamei@kpu.ac.jp